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5) 確かに感じる「それ」

私はトリコに、助けられ、守られ、だからトリコを求めた。
トリコは私を、助け、守ったが、それより以前から私を求めていたように思う。


「こんな翼で空を飛べるの?」 「さあ、どうだろう」 


大鷲というには不格好で、巨体に対して小さすぎるそれは、とても見すぼらしく、また、哀れだった。
実際、トリコは飛行することが出来なかった。せいぜい十数メートルを跳躍したり、飛び降りたり、飛び登ったりする程度のそれ。
(プレイ開始時の描写から、)トリコはひどい怪我を負ったせいで、きっと、もう二度と空を飛べないのだ… 
私はそう早合点し、このゲームの解法として[トリコが空を飛ぶ]という可能性を、頭から消し去ってしまっていた。

無数の鎧、鎧、鎧…
これまで目にしたことのない大量の[鎧]の群れが、隊列を組んで私に向かって押し寄せて来たとき、
私はゲームオーバーを覚悟し、半ば諦めの境地でコントローラーを握る手を緩めた。
それはこれまで繰り返してきた無数のゲームオーバーと同じものだと思ったし、
また繰り返しプレイすればいいだけだ。だってこれはゲームだから。


ところがトリコは私を守るために、これまでずっと恐れていた[目]に怯むことなく、[鎧]に立ち向かった。
足場を失い、いよいよもう駄目か――― そう思ったその瞬間、緩く握っていたコントローラーが大きく震えた。

トリコが、トリコが、その背に私を乗せて、空を飛んだのだ!

ああ、気が付けば、見すぼらしかったはずのあの翼は、神々しさを携えながら、雄大に大空をかき分けている。
私はその変化に気が付かなかった。
トリコの翼が少しづつ回復しており、ゆくゆくは恐怖を克服し大きく飛躍するであろう兆しであったということに、まるで気が付かなかった。
私は、言葉尻ではトリコを可愛いと言い、怪我をすれば心配し、撫でてやり、私なりに大切にしてきたつもりだった。
しかしその実、私は私のことしか見えていなかったのだ。


今になって思い返すと、コントローラーが震えていたのか、私自身が震えていたのか、解らない。
私は実際には、コントローラーを握りトリコの背に乗っていただけだったが、飛行機に乗っているその感覚とは全く異質の、
自らの力で、自らの翼で空を飛んでいたのだと――― そんな実感を得ていた。

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